
2012年8月のこと
この夏、僕は休日をプランクトンと過ごした。
僕のクリニックの前の溝にいっぱいザリガニがいる。ブルーギルの稚魚もいる。
と言うことはそいつらの餌となるプランクトンもいるはずだと思いすぐに水を採ってみる。
浅い所、中位、底。すぐに顕微鏡で見てみる。スライドグラスにスポイドで吸って一滴落とす。今まで、この溝を僕は何百回も覗いていたが知らなかった世界があった。
フナガタケイソウ、サヤミドロ、ゾウリムシ等々。この辺りでいると思っていた生き物は人間、犬、猫、カラス、鳩、サギ、メジロ、ツバメ、蝶、トンボ、蚊、蛾、ハエ、ブルーギル、バス、ザリガニ、ぐらいだったが、お前らの仲間のほうが多いではないか。こいつは面白い。春日池にも行ってみる。
まず、しょうぶ園の周りの溝からペットボトル一杯採る。透明度の低い泥水。
たくさんのプランクトンに会える予感。しょうぶ園と春日池の間で草が密集して生えている所から一杯。
春日池からは魚釣りの時の水くみで水を採取しペットボトルに一杯。早速、顕微鏡を覗く。期待通り溝から採取した水の中に一番多種のプランクトンを見つけた。殻に包まれた中の細胞だけがクルックルッと回っている(トラケロモナス)。
時々パタッパタッと横転して見える形が変わるのもいる(クチビルケイソウ)。草の密集していた場所の水ではゆっくり動いたりササッと動いたりしているコンピディウム、小さなあわびのように見えるフロントニア等を見つけた。
待てよ、この場所ではほとんど植物性プランクトンがいないじゃないか。
草のせいで光が届かず光合成ができないからか。正解?
そうそう春日池には家の近所にはいない亀、白鳥がいた。
そしてしおからトンボも、黒あげはもいた。
しかし、一番広い春日池ではプランクトンは見つけきれなかった。いないはずはない。思いついて自転車で芦田川に行った。少し川の中に入ってペットボトルに水を採取し顕微鏡で観察。ここでもプランクトンが見つからなかった。この日の観察はこれで終了。
行きつけのお好み焼き屋のかあさんに全部話した。全くのりが悪い。
これはいかん。寿司屋へはしご。最初は面白そうに聞いてくれていたが別のお客が入ってきたら僕の傍から離れた。この一日の出来事、誰に話せばいいのだ。
そうだ、クラブのおねえさんだ。
「ゴミだと思ったらコエロスフェリウムだった。」「いちぜんのはしのような形のハリケイソウはスイーピョコ、スイーピョコ動くんだ。」やっとうけた。
「今度、私にも見せてね。」とも言わせた。
そうなのだ、50歳を過ぎた大人が少年のように純粋にプランクトンについて夢中で話す姿はたまらないのだ。僕はご機嫌でたくさんのお金をクラブに払って帰った。
今回のプランクトンの観察で疑問が残った。なぜ広い春日池や芦田川ではプランクトンがほとんど見つからなかったんだ。それならば海ではどうだろう。海へGO!
春日池より芦田川より海は広い。広い海では海水を濃縮しないとプランクトンは見つけられないと本に書いてあった。
おいおい、春日池も芦田川も濃縮すればプランクトンはいたのか。ペットボトルの上から三分の一を切り取る。ウエスギヘ、キュプラ100%の裏地を買いに行く。
輪ゴムでペットボトルの切り取った口に裏地を固定する。自前のプランクトンネットのできあがり。
太陽のガンガン照りつける中。海へGO! 芦田川から海へ出た汽水域、鞆の浦の平の波止、潮溜まりで採取。海水をすくってはプランクトンネットで水をこす。だんだん黄色がかった水が集まる。プランクトンたっぷりのはずの海水濃縮液ができてきた。5時間かけて濃縮液を集めた。さあ顕微鏡へGO!
オヨヨ?春日池と芦田川の時と同じではないか。プランクトンが見つからない。岩国市立ミクロ生物館に聞いてみよう。電話。
「館長は今不在です。私で解る事は話します。」「全然プランクトンがとれないんです。」「キュプラ100%では目が荒すぎてプランクトンは素通りします。」
あの灼熱の太陽の下の5時間を返せ。いざ岩国市立ミクロ生物館へ。
翌日、福山13時29分のこだまで岩国へ。14時41分新岩国駅へ到着。電話で聞くと由宇の海水浴場にあるとの事。「カープの2軍の練習場があるとこよね。」猛烈に飛ばすタクシーのおじちゃんといろいろ話しながら到着。海水浴場の売店の隣にあった。水着を着た海水浴客が顕微鏡を覗いている。今日も館長不在。
でもお姉さんが詳しく教えてくれる。
「大潮の時は沖からたくさんプランクトンが来ます。光に集まるものもあります。」一番の収穫はプランクトンネット。1個1000円。怪しげなプランクトン収集グッズ。一個だけ残っていた。日曜大工の店に売っとりそうなプラスチックの筒に適当なネットがくっつけてあるように見える。Wプランクトンネット2号Wと名づけた。
次の休みの日、プランクトンネット2号を持って海へGO!
同じ場所で再度海水を採取した。芦田川の海水域では生活排水の流れ込む場所ではアオコが発生して一面緑色になっていた。顕微鏡を覗くとプランクトンネット2号の効果は絶大。この日だけで29種類のプランクトンに出会えた。
疑問も浮かんだ。すぐに岩国市立ミクロ生物館へ電話した。
「ワムシと緑藻は、海水にいませんでした。その理由を教えてください。」
「節足動物がケンミジンコ以外は海水にしかいなかったのは、海には甲殻類の幼生が多いためですか。」
「採取してきた翌日、顕微鏡で観ると、死んだミジンコの周りに微生物がいっぱい集まっていました。集まっていた生物はバクテリアで、バクテリアがミジンコを食べていると考えていいでしょうか。」
館長さんは、一つ一つ丁寧な返事をメールして下さった。
さて、モルトウィスキーを飲みながらのこのエッセイ。少し眠くなってきた。それでは、簡単に、まとめ。
生活排水が海に流れ込んでいる場所にアオコという現象が発生していて、その原因となるアナベナやミクロキスティスが顕微鏡の中にたくさんいた。家の台所やぼくらの意識できれいな海を守ることができる。
死んだミジンコにたくさんのバクテリアが集まってミジンコを食べていた。
食物連鎖の流れは、上にも下にも行く。生物が死んだ時、逆の食物連鎖が起こる。実感した。
ぼくが子供の頃、府中から仙酔島へ、自転車で魚釣りに出かけたこと。おなかがすいたら、急な石垣の隙間に、ハチの幼虫を採りに行っていたこと。そんなときのワクワク感を思い出しながら、プランクトンを観ていた。
ぼくのお気に入りプランクトン。淡水ではクンショウモ。海水ではイカダケイソウ。
夏の恋物語 おしまい

サラサラのウスターソース。
昔はどこの食卓にもソースさしはあった。
大衆食堂にもあった。
デパートの最上階の大食堂にもあった。
カレーにかけた。
焼き飯にもかけた。
天ぷらにもかけた。
トンカツにもかけた。
フライにもかけた。
目玉焼きにもかけた。
今ではすっかり見なくなってしまった。
昭和の思い出と共に去っていったのでしょうか。
19世紀の初めに英国のウスターシャー州ウスターの主婦が
食材の余りを調味料と共に入れ保存したままにしたところ
ソースが出来ていた。これがウスターソースの始まりだそうです。
イギリスの元祖ウスターソースはアンチョビ、タマリンド、
エシャロット、クローブ、ニンニクなどを材料にしています。
日本のウスターソースはトマトやりんごなどといった野菜果実の
絞り汁、煮出し汁、ピューレに糖類、食酢、食塩、香辛料、でん粉
カラメルなどを加え貯蔵熟成させて作ります。
野菜や果実に由来する甘味酸味に特徴のある日本独自の
調味料といっていいようです。
ウスターソースは粘度の違いによって
ウスターソース(最もさらっとしている)
中濃ソース(ややとろみがある)
濃厚ソース(中濃ソースよりもさらに粘度が高い)
に分けられます。
トンカツソースやお好みソース、焼きそばソース、たこ焼きソース
どろソース等はだいたい濃厚ソースに入ります。
ぼくの愛してやまないウスターソースはさらっとしたウスターソースです。
ブルドックソースとイカリソースはやや辛口のウスターソースです。
似ていますがぼくはスパイシーで深みのあるイカリソースの方が好きです。
キャベツの千切りにぴったりです。
ただ、トンカツ屋のようにキャベツを細かく切りすぎると合いません。
その場合、もっとあっさりした調味料がいいでしょう。
カゴメソースは甘口で酸味が強くピーマンの天ぷらやたまねぎのてんぷらにどうぞ。
三ツ矢ソースもまろやかでコクがあり野菜の天ぷらによく合います。
特にさつまいもの天ぷらや野菜コロッケとの相性は抜群です。
コロッケでもクリームコロッケはフルーティーな倉敷玉島のタテソースをお勧めします。
京都のツバメソースはスタンダ−ドなウスターソースです。
串カツにかけて食べてみて下さい。いくらでもいけます。
食パンとウスターソースとの相性もなかなかです。
食パンに野菜コロッケを挟んで三ツ矢ソースをさっとかけて思いきりかぶりついて下さい。
食パンは焼いてはいけません。そのままやわらかい食パンでいって下さい。
カレーや焼飯にはカゴメソースがばっちりです。ただし、普通に半分食べてその後
残りの半分にサッとかけて食べるのがみそです。一皿で二度おいしい!
カレーにはウスターソースではありませんが濃厚ソースの大阪のどろソースを
かけると又一味違います。
ウスターソースとの黄金の相性はもちろんアジのフライです。東京のハチ公ソースを
使います。まず、サッとハチ公ソースのフルーツタイプをかけてその上に通常の
ハチ公ソースをジャバジャバかけます。
さあ、椎名誠のようにワシワシ食べて下さい。最高に幸せ。